カリモノ
長雨の後の晴れ間
潤いを含んだ風が頬を撫でていく
来週のフリーマーケットのために
出せそうなモノはないかなーと
納戸でお宝探しをしていると
懐かしい民芸品たちが出てきた
それを眺めながら
学生時代 西洋民芸品を売る店で
アルバイトをしていた時に出逢った
個性的な人たちの顔を思い浮かべる
休憩時間はお店の並びにあった
骨董品のギャラリーに入り浸っていた
3人も人が入れば良いほどの小さな空間で
ギャラリーと言っても展示品は数点
博物館や美術館と取引をするようなモノを取り扱い
訪問客はそこの主人に会いに来る
その筋の方達くらい
ほとんどが紀元前のモノたち
それを気さくに手に取って見せてくれ
時代背景からその時代の技術
そして美術品としての価値などを
美術書と照らし合わせながら
詳しく説明してくれた
“すごいだろ“ “美しいだろ“と
ウイスキーグラスを片手に
にこにこしながら
モノたちへの愛を語ってくれた
普段はガラス越しで観るような
美しいモノたちと触れ合うことができた
それはそれは貴重な時間だった
その主人が言っていた言葉を
ふと思い出した
“一時 預かっているに過ぎないんだよな“
お金を出して物を買う
それは その物と一緒に過ごす時間を頂いていること
時が来ればまた他の人の元へと移っていく
そんな内容のことだった
今までそうだったように
気ままにその時 気に入った所に住み、移り...
私は旅をするような人生を送るのだろうと
漠然と思っていた
田舎暮らしをしたいと
6〜7年くらいかけて
賃貸物件を探していたのに
不思議なご縁で
この土地を購入して住むことになった
ここに来るまでは
所有することに違和感があったものの
開拓民のご夫婦が
愛情込めてつくり上げた
庭や森を受け継ぎ
さらに多種多様な生き物や
植物が生きていけるような
そんなところにしたいという想いが生まれ
一つ所の自然の移り変わりを
愛でていく
そんなくらしもいいなと
思い始めている
購入したといっても
そう 一時 ここの土地に
住まわせてもらうにすぎない
言ってみれば
この世の全てはカリモノ
自分の肉体も
カリモノ
魂が今生で留まる
入れモノ
地球上で
お借りしている間は
大切にして
できれば存分に味わってお返ししたい
そんなことに 思いを巡らしつつ
フリーマーケットに出すモノたちが
どんな人の元へいくのかが 楽しみになってきた