お山くらしの楽しみ
風や陽の光に
秋の気配を感じるようになってきた
朝晩は窓を開けたままでは肌寒い
とはいえ日中 晴れた日は日射しが強く
部屋の中では扇風機をまわしている
まだまだ蝉たちの大合唱が聴こえる
お山くらしを始めてから
春から夏にかけては
やることは日々盛り沢山
畑の種まきをして
たけのこが顔を出したら
収穫しつつ
竹林が広がりすぎないように
小さいうちに切っていく
山菜が元気に顔を出す
それをよけながら
草刈りや木々の剪定
食用や薬用に野草を摘む
梅の実の収穫
それに加え 今年はニホンミツバチの分蜂と採蜜
そして 東京行きが激減したので
古い牛舎のリノベーションも着手した
道具を一緒に買いに行き
使い方を教えてくれる
材料は調達してくれる
解体して出た木材や廃材を利用し
なるべくあるものを使う
できるところは自分でやるが
できない所はやってもらう
そんなことを叶えてくれる
大工さんがいたらいいなーと
思っていたら その通りの方を
ある日突然 友人が紹介してくれた
ちょうどレストランの増築作業をしていた
大工のYさんを訪ね 事情を説明すると
“自分でやりたい!って顔しているね〜“
と面白がってくれた
Yさんの丁寧でわかりやすい指導のおかげで
解体作業では 違う大きさのバール3本を使い分け
電動ノコギリや電動ドライバーも使いこなし
ビス打ちも楽しくなってきた
Yさんも このリノベを 楽しいな〜と言い
“何だか『北の国から』を思い出すね〜“と
古い建具を 納戸の壁代わりに取り付けながら
テーマソングを口ずさんでいた
八ヶ岳でまた一人
愉快な仲間ができた
To bee , or not to bee , that is the question.
梅雨が明けてから
サンサンと陽光が降り注ぐ日々
長雨で十二分に水分を蓄えた地中から
一斉に草たちが成長を始めた
梅雨の最中 蜂の巣箱の一つから
蜂さんたちがある日突然 逃去した
前兆としては
さなぎの死骸が2日間ほど続けて
10匹くらい落ちていた
地元で30年以上
ニホンミツバチの養蜂をされている長老と知り合ったので
その方に訊ねると “蜜源が十分でないからだね“ と一言
巣に集められた蜜は蜂が育つための大事な食糧
食糧難になってくると
弱いサナギから犠牲になっていくらしい
ごめんね サナギさんたち
巣箱が一つから三つに増えたのに加え
長雨で蜜を取りに行けない期間が長かった
そして 夏の時期が一番蜜源が少ないので
“ここでは生き残れない“と判断すると
新しい居住先を探して 一斉に移動する
ミツバチが安心して
いのちを繋いでいけるように・・・と
想いを巡らすと
我が家の庭はもちろん周辺の環境も重要
森の木々から多くの蜜を得るので
森の整備も欠かせない
ニホンミツバチと共に暮らし始めて
「ミツバチ」と「ハチ」の違いを知った
日本語ではミツバチもスズメバチも「ハチ」だが
英語では区別されている
日本ミツバチ・西洋ミツバチ・クマバチなどの
花バチを 「bee」
狩バチは「wasp 」
花バチは巣を脅かすような危害を加えない限り
普段は刺さない
巣の周りに近寄ったり
顔の周りに来た際に手で払ったりすると
危害を加えられたと判断して
刺してくる時もある
日本では「蜂」と名のつくものは
往々にして狩バチのイメージが強くて
「蜂」イコール危険というイメージがあるのかもしれない
ご近所の方達には
事前に違いを説明して
“刺さないからね〜“とお伝えしておいたので
“お宅のニホンミツバチちゃんたち
うちの庭に来てたよー“
“シロアリの駆除の薬を撒くけど
ミツバチちゃんたちは大丈夫かしら?“
と気にかけてくれるようになった
ご協力いただいているお礼に
先日採蜜した蜂蜜をお配りした
皆さんに見守られながら
蜂さんたちは今日も
元気に飛び回っている
スギナのきもち
雨の日が続き
お茶をいただく機会が増えてきた
庭のスギナを乾燥して
焙煎したものに
その時の気分で
ハーブを摘んできて
毎回違うハーブティーを楽しむ
今のお気に入り
地元の方にスギナを
“お茶にして飲んでいる“と言うと
びっくりされる
農家の方々にしてみたら
スギナは敵
別名『地獄草』と呼ばれるほど
地下茎でビッシリ根を張って
力強くどんどん増えていく
庭を観察していると
スギナが ものすごく生えている所と
全く生えていない所がある
生えている草の種類で
土の状態が分かるらしい
いわゆるph、土質
どのくらい人の手が入っているか
などなど
なんとなくそこにいると思っていたが
実は意図があって生えているらしい
スギナはカルシウムや
カリウムなどのミネラルが豊富
土に必要な栄養を補給したいから
スギナたちは生えてくる
だから刈ったスギナを土に還すことで
地力が上がってくる
土の力が上がってくると
生えてくる草も変わってくる
先人が畑をやっていたであろう箇所には
スギナは生えておらず
他の草が生えているのも納得した
生える草によって
集まる虫
地中の微生物も
また変化していく
スギナのきもちを想うと
土つくりのお仕事を
していただけなんですね
と言いたくなる
我が家の庭では
スギナがたくましくしているので
しばらく 土筆やスギナ茶は
楽しめそう
百花ミツ
梅雨の晴れ間に
初めての採蜜
一年前に置き始めた一つ目の巣箱
蜂たちがコツコツと巣造りをして
おすそ分けを頂くのに
十分な大きさになっていた
蜂の先生曰く
西洋ミツバチは 養蜂家の意のままに
沖縄から北海道まで
花を求めて
巣箱を移動しながら
採蜜をしている
一方「森の自由な住人」といわれる
とても環境に敏感で
自分たちに合わないと
巣箱から逃去する
人間の意のままにならない
寄り添い その生活の一部を
手助けすること
それが絶滅を囁かれている
ニホンミツバチと共生するには
大切な意識
という
野生(自然巣)のニホンミツバチが
減ってきている理由は
農薬やアカリンダニなど
様々な要因が考えられている
ニホンミツバチとくらし始めて
ますます自然環境に
想いを巡らすようになった
蜂の視点を想像してみる
蜂が飲める水
蜜源になる草花、森
そしてその根元となる土の環境
習性上 さまざまな花から
蜜を集めるため
採蜜の季節、地域によって味が違う
巣箱ごとのオリジナルブレンドになる
「百花蜜」といわれる由縁
作業を無事に終え
蜂さんたちにお礼を言い
縁側でお茶をいただく
複雑な蜜の味に酔いしれながら
ニホンミツバチの奥深い世界を
先生と語り合う
そこここにアリ
梅雨もちょっと休憩
庭仕事をしながら
風に揺れる木々や草花が目にやさしい
スイカズラの香りを風が運んでくる
蝶や鳥たちがにぎやかに飛び回っている
晴れた朝は 縁側にいると
一匹のニホンミツバチが
“おはよう〜!
今日もこれからお仕事開始だよ〜“と
挨拶にくる
そして しばらく頭上を回遊して去っていく
蜂の先生に訊くと
“蜂は主人を分かっているからね
挨拶にくるんだよ“ と一言
静かに感動
先日 冷蔵庫を開けると
アリさんが列をなして
お目当ての蜂蜜に向かっている
冷蔵庫の中まで食糧を察知できる能力に
ただただ脱帽
庭で木々の剪定をしていると
高い幹に 間隔をほとんど空けずに
高速チームの行列
地上だけでなく
こんな高いところでも
お遭いできるとは
蜂の巣箱を見にいくと
白い何かを運んでいる
運び屋チームの方たちがいた
よく見ると卵のようなもの
蜂の先生に電話をして訊くと
弱った卵を 通常は蜂が自ら運び出すらしい
時々それをアリさんが担ってくれるそう
“蜂さんとアリさんは協力するから
心配いらないよ〜“
深く感動
アリさんに向かって思わず
“お仕事してくれてありがとう!“と一言
お山くらしは日々たくさんの発見と感動の連続
天空のアート
幼少時代から空を見るのが好きだった
学生時代はボーッとしたい時に
空を見るお気に入りのベンチがあった
仰向けになって
流れていく雲を眺めていると
心が透明になった
お山くらしの嬉しいことの一つは
空がとにかく広いこと
先日 ご近所の友人に
近くの素敵なお空スポットを教えてもらった
空を見上げながら
2人で感嘆の声をずっと上げていた
地球に生まれてきてよかったと思うひととき