森の妖精
パレットに色が加えられるように
日々お庭に鮮やかな色彩が増えていく
それは本当に神秘的な風景
植物が芽吹く季節
毎朝 お顔を出した方達に遭うのが
とても楽しみ
剪定や土作りの合間に
休憩をしていたら
軽トラのエンジン音がした
木工職人のIさんだった
仕事場で出る木屑が溜まったら
我が家に届けてくれることになっている
いつものように突然やってきた
そしていつものように
牛舎のリノベの様子を見て
話が始まる
木の性質を知り尽くしているだけに
ちょっとしたアドバイスも
ありがたい
防腐剤を使わなくても
こうしてこうしてこうすれば
木は腐らないよとか
こうすれば歪まないよ〜・・・
昔の人は今のような化学製品がない中で
色々知恵を絞ってきた
それを例に教えてくれる
Iさんは木の声を聴いて
愛情を持って
家具や小物を創るので
出来上がったものは
喜んでいる気がする
そんなIさん
30年前に八ヶ岳に移住して
自分で家を建てて
一回火事で焼けて
また建てて・・・
ハプニングだらけの
人生のお話を聴くのも楽しい
特に用事がなくても
仕事場に行くと
お話が止まらず
気づけば辺りは暗くなっている
八ヶ岳南麓の愉快な仲間のお一人
心優しいIさんは
動物たちとも仲良し
最近Iさんが森の妖精に見えてきた
ユカイなヒトたち
八ヶ岳南麓のお山くらしを
始めてからというもの
アイルランドでの生活を思い出すことが多い
“八ヶ岳おろし“と言われる強風
縄文土器の渦巻き......
いろいろ思い出すきっかけはあるが
最近思うのは
土地の空気感というか
出逢う人々がとにかくユニークで
自由に自分軸で生きている人が多いのも
理由の一つかもしれない
牛舎のリノベを手伝ってくれているYさん
彼は元々他県の会計事務所で働いていたが
北杜市の愉快な人たちに魅了され
移住してきて 大工になったという経歴
税金など お金にまつわる相談もできる
珍しい大工さんなのである
この人は職業柄 とてつもなく顔が広い
そして 紹介してくれる人々も
とにかく個性的
ある日 ランチの後に
森の中の素敵なカフェに連れて行ってくれた
白髪のお肌ツルツルの
素敵なご婦人のTさんが店主
なんと77歳でお店を始め
現在は80歳という
とてもそんなお歳には見えない
波乱万丈な人生の一部を聴き
目の前の素敵な笑顔に魅かれる
“この歳になっても
カフェをしているおかげで
ここで待っているだけで
人が来てくれるんですもの
本当によかったわ〜“
とにかくことばが明るいので
Tさんに会いにくるリピーターが多いという
ある晩 翌日分のケーキがないことに気づき
夜遅く開いているスーパーに小麦粉を買いに...
森の中は電灯はなく 本当に真っ暗
“車のヘッドライトの明かりだけで
走りながらもう 怖くて怖くて〜
楽しい歌を歌いながら走ったわ〜“
とケーキを出しながら話してくれた
Yさんが外で作業をしている時に
私に囁くように
“実はね Y君のことはね 息子より可愛いの“
とチャーミングな笑顔で話してくれた
そのことを 帰りの車の中でYさんにお伝えすると
“最近はね めんどくさいからって
人に紹介する時に「息子です」って
真面目にいうんだよ〜“と
笑いながら 嬉しそうに言っていた
YさんとTさんのお付き合いは長い
自宅をカフェにリフォームしたのもYさん
仕事で近くを通ると
一人くらしのTさんが元気にしているか
安否確認も兼ねて立ち寄るという
牛舎のリノベ中にも
Tさんから時々電話がかかってきた
程よい距離感で繋がっている
そんなところもアイルランドのくらしを
思い出させてくれる
風のキオク
しばらく 雪や強風の日が続いていた
穏やかな日が訪れるようになり
お休みしていた木々の剪定を再開
お山くらしでは
風と対話することが多い
風を頬に感じる時に
“これは沖縄からの風だね〜“
“これはこれは・・・“
と心の中でつぶやく
八ヶ岳南麓でくらすようになって
頻繁に感じるのは
アイルランドからの風
アイルランドはお隣のイギリスと違って
メキシコから暖流が流れてくるので
冬でも雪はほとんど降らない
ただし 強い風が吹く日が多く
体感温度は低め
特に海沿いや草原に立つ木々は
常に強風に吹かれているせいか
斜めに傾いて立っている
人も前方に傾いて歩いている姿を
よく目にした
大気の塵や埃を
運び去っていくのと同じように
風にあたると
心に滞ったものが
祓われるような気がして
アイルランドでくらしていた頃は
風に吹かるために よく散歩をした
大学を卒業してから
アルバイトで資金を貯めて
アイルランドへ飛んだ
よく “なぜアイルランドを選んだの?“と訊かれる
“アイルランドの音楽が好きだったから“
“渦巻だらけのCeltic Artに魅かれたから“
“いまだに妖精の存在を信じる人たちに
会ってみたかったから“
理由を挙げれば
それなりに出てくるが
一言で言えば
直感
とにかく行かなければ
この先の人生が始まらない気がした
そして呼ばれるように
後先考えず飛んだ
扉が次々と開かれるように
辺境の地で
様々な出逢いと体験が待っていた
またもや導かれるように
くらすことになった八ヶ岳南麓も
風が吹く地
風が運んできた記憶のカケラと共に
剪定作業はまだまだ続く
Like attracts like
お山くらしは 今年で3年目に入る
顔見知りが増えるにつれ
あっという間に
トモダチのトモダチは皆友達だ
という具合に輪はどんどん広がっていく
八ヶ岳界隈では
頻繁に起きていたことが
最近 甲府でも起き始めた
甲府のカフェに入ったある日
店主のNさんと
フィンランド関連の話をしていた・・・
先日北杜市にあるレストランで
コーヒーを注文すると
カップの写真を見せながら話したところ
“そのお店は 〇〇ではないですか?“
と言い当てた。
“えっ?“と驚いていたら
そのレストランの店主とNさんは
知り合いだった
なんと Nさんは北杜市出身で
実家の住まいの上の階に
レストランの店主家族が住んでいたという
今でも時々レストランに食べに行くらしい
“そのコーヒーカップは店主のお気に入りなんですよ“と
そんな話から数分後
好きなアーティストの曲が流れてきた
“〇〇さんのCDですよね? いいですよね〜
先日近所のカフェでも流れてきて・・・・“
とそのカフェの名前を伝えると
“そのカフェの店主の奥さんは友人です“
と またもや。
そんなことがわんさか出てきて
レジの前でず〜っと立ち話
その直後に行った植物を扱うお店でも
同じように 何気に呟いた一言から
次から次へと繋がっていった
東京でくらしていた時と比べると
輪はより高速で広がっていく
もう一つ嬉しいこと
それは“ここに行けば誰かに会える“
と言う場所ができたこと
近所のお店では
知り合いとバッタリ遭うことが多々ある
笑ってしまったのは
先日ちょうど友人の好物が店先に出始めて
お知らせしようかな〜
なんて顔を想い浮かべていると
本人が向こうから歩いてきた
Aさんに次回の集まりはいつか訊こうかな〜
なんて思ってたその日の夕方
友人と定食屋に入り
Aさんの活動を説明していた
まさにその時!
レジの前からこちらに手を振る人が・・・
それがAさんと仲間たち
挙げればキリがない
そんな驚きの遭遇があるのも
お山くらしの楽しさ
早いもので・・・
引っ越し業者がお休みに入る直前の年の瀬
慌ただしく移動をしてから
まもなく2年が経つ
標高約1000メートルの生活にも
心身共に だいぶ馴染んできた
アポなしの訪問にも
すっかり慣れてきた
仕事の手を止めて
突然の訪問客と過ごすことが
楽しくなってきた自分がいる
夏から参加した
“土中環境“の勉強会で知り合った方が
実は徒歩5分の所に住む
ご近所さんだと分かり
犬と散歩の際に
おすそ分けに寄ってくださる
先日は 犬だけでなく
滞在中の娘さんと
かわいいお孫さん二人を連れて
突然遊びにきてくれた
今日も 突如 長老が軽トラで登場
忘れた頃に
お願いしていた稲藁を持ってきてくれた
進行中の牛舎のリノベの話で
盛り上がったと思えば
ハーブや木々の剪定の話から
保存食の話・・・・・
“コーヒー飲みたいな〜“と
長老が突然言い出しても
ちゃんとそんな時のために
お菓子も常備
縁側で空を見ながら
ゆっくりコーヒーを飲み
今度は木材の話
東京でくらしていた時には想像できなかった
豊かな濃い時間が流れる
お山くらしでは 予定は天気でも大きく変わる
そんなことにもすっかり慣れて
楽しんでいる自分がいる
そんなこんなで
あまり先の予定を決めない生活
決めても “とりあえず“ が暗黙の了解
予定があるようでないような
目の前に起きたことに寄り添って
その時を存分に味わう
ここでのそんなくらしに感謝して
たくさんのありがとう
手シゴト
11月に入るとお山くらしでは
冬支度が始まる
タイヤの交換
雨樋のお掃除
少しづつ室内の大掃除
保存食をいろいろと仕込む
今年は初めての柿酢作りに挑戦
野草・葉・枝のブレンド茶つくり
花や野菜の種取り
木々の剪定.....
そして年が明けたら
人生で初めてお迎えする
薪ストーブのために
いろいろと学びたいな〜と思っていたら
先日タイミングよく 森想の活動で
“薪を焚く〜暖をとる・工夫と提案“
というのを催してくれた
薪を伐って
割って
積んで
乾かす
焚く
今年から活動に加わり
森の手しごとを学び始めた
ナタを触ったことがなかった私が
マイ鉈を購入し
鉈の鞘に真田紐を巻く
腰から鉈をぶら下げる
樹木医の先生から
樹の剪定の仕方を教えて頂き
鉈で火付け用の枝を
焚きやすい長さにする
古の人たちは
鉈を子供の頃から使い
森の手入れをしてきたという
森の中 みんなで火を囲みながら
森でも手しごとが生きていた時代の話を聴いた
新しい技術を取り入れつつも
引き継がれてきた
手しごとも大切に
楽しみたいと思う
樹木のいのちが
移りかわり
暖をとることができる
その神秘に感謝する
手しごとはその想いを
咀嚼するのに
必要な時間を与えてくれる
カリモノ
長雨の後の晴れ間
潤いを含んだ風が頬を撫でていく
来週のフリーマーケットのために
出せそうなモノはないかなーと
納戸でお宝探しをしていると
懐かしい民芸品たちが出てきた
それを眺めながら
学生時代 西洋民芸品を売る店で
アルバイトをしていた時に出逢った
個性的な人たちの顔を思い浮かべる
休憩時間はお店の並びにあった
骨董品のギャラリーに入り浸っていた
3人も人が入れば良いほどの小さな空間で
ギャラリーと言っても展示品は数点
博物館や美術館と取引をするようなモノを取り扱い
訪問客はそこの主人に会いに来る
その筋の方達くらい
ほとんどが紀元前のモノたち
それを気さくに手に取って見せてくれ
時代背景からその時代の技術
そして美術品としての価値などを
美術書と照らし合わせながら
詳しく説明してくれた
“すごいだろ“ “美しいだろ“と
ウイスキーグラスを片手に
にこにこしながら
モノたちへの愛を語ってくれた
普段はガラス越しで観るような
美しいモノたちと触れ合うことができた
それはそれは貴重な時間だった
その主人が言っていた言葉を
ふと思い出した
“一時 預かっているに過ぎないんだよな“
お金を出して物を買う
それは その物と一緒に過ごす時間を頂いていること
時が来ればまた他の人の元へと移っていく
そんな内容のことだった
今までそうだったように
気ままにその時 気に入った所に住み、移り...
私は旅をするような人生を送るのだろうと
漠然と思っていた
田舎暮らしをしたいと
6〜7年くらいかけて
賃貸物件を探していたのに
不思議なご縁で
この土地を購入して住むことになった
ここに来るまでは
所有することに違和感があったものの
開拓民のご夫婦が
愛情込めてつくり上げた
庭や森を受け継ぎ
さらに多種多様な生き物や
植物が生きていけるような
そんなところにしたいという想いが生まれ
一つ所の自然の移り変わりを
愛でていく
そんなくらしもいいなと
思い始めている
購入したといっても
そう 一時 ここの土地に
住まわせてもらうにすぎない
言ってみれば
この世の全てはカリモノ
自分の肉体も
カリモノ
魂が今生で留まる
入れモノ
地球上で
お借りしている間は
大切にして
できれば存分に味わってお返ししたい
そんなことに 思いを巡らしつつ
フリーマーケットに出すモノたちが
どんな人の元へいくのかが 楽しみになってきた